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腸内環境は太りやすさに関わっている?短鎖脂肪酸と肥満の深い関係

「食事量はそれほど変わっていないのに、なぜか太りやすく感じる」
「運動しても、体のラインがすっきりしにくい」
そんなとき、注目したいのが腸内環境です。

近年の研究で、腸は“消化・吸収の器官”というだけでなく、体重や脂肪のつきやすさにも関わる重要な役割を持つことが分かってきました。
その鍵を握るのが、腸内細菌がつくり出す「短鎖脂肪酸」です。

腸内細菌と体の関係 「太りやすさ」は腸から決まる?

私たちの腸内には、数百種類・数兆個もの細菌がすんでいます。
これらは「腸内フローラ」と呼ばれ、食べたものの消化を助けるだけでなく、体の代謝や脂肪の蓄積にも深く関わっています。

腸内細菌のバランスが整っていると、食べたエネルギーが効率よく使われ、脂肪としてため込みにくくなります。
一方で、腸内環境が乱れると、脂肪がつきやすく、落ちにくい状態になりがちです。

この違いを生み出しているのが、善玉菌が作る短鎖脂肪酸です。

短鎖脂肪酸とは? 腸がつくる“代謝サポート物質”

短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵することで生まれる物質で、主に「酢酸・酪酸・プロピオン酸」などがあります。

これらは腸の中でさまざまな働きを担っています。

◎ 短鎖脂肪酸の主な働き
・腸の動きを整え、便通をサポート
・腸管バリアを守るエネルギー源になる
・脂肪の蓄積を抑える
・満腹感を高め、食べ過ぎを防ぐ
・血糖値の急上昇を抑える

このように短鎖脂肪酸は、腸から“太りにくい状態”をつくる重要な役割を担っているといえます。

 短鎖脂肪酸が不足するとどうなる?

腸内環境が乱れ、善玉菌が減ると、短鎖脂肪酸の産生量も減ってしまいます。
すると、体の中では次のような変化が起こりやすくなります。

・脂肪が燃えにくくなる
・食後の満足感が続かず、間食が増えやすい
・血糖値が乱れ、脂肪をため込みやすくなる
・腸管バリアが弱まり、体が“炎症モード”になりやすい

これらが重なると、
「以前と同じ生活なのに太りやすい」
「お腹まわりだけ落ちにくい」
といった変化を感じやすくなります。

短鎖脂肪酸を増やす食事のポイント

◎鍵は「オリゴ糖」と「食物繊維」
短鎖脂肪酸を増やすために欠かせないのが、善玉菌が元気に働ける環境づくりです。
その中心となるのが、オリゴ糖です。

オリゴ糖は消化されずに大腸まで届き、ビフィズス菌などの善玉菌のエサになります。
その結果、腸内で短鎖脂肪酸が作られます。

◎ 短鎖脂肪酸を増やすための食材
・オリゴ糖(甘味づけを砂糖から置き換える)
・海藻・きのこ・大麦などの水溶性食物繊維
・野菜・豆類・果物
・発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト)

特に、「食物繊維+オリゴ糖」の組み合わせは、短鎖脂肪酸を増やすうえでとてもおすすめです。

無理なく続く“腸からのダイエット”

体重や体型を整えたいとき、「食べる量を減らす」「我慢する」方法は長続きしにくいもの。
一方、腸内環境を整えるアプローチは、食事の質を少し変えるだけで始められ、体への負担も少ないのが特長です。

甘味をオリゴ糖に替える。
食物繊維を意識して一品足す。
そんな小さな積み重ねが、短鎖脂肪酸を増やし、太りにくい体づくりにつながっていきます。

<監修者プロフィール>
松生 恒夫
1955年東京生まれ。医学博士。松生クリニック院長。東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2003年、東京都立川市に松生クリニックを開業。6万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた腸疾患治療の第一人者。便秘外来の専門医として地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを取り入れた診療で効果を上げている。著書に『子どもの便秘は今すぐなおせ』(主婦の友社)、『見た目は腸が決める』(光文社)、『「腸の老化」を止める食事術』(青春出版社)、『日本一の長寿県と世界一の長寿村の腸にいい食事」(PHP研究所)など多数。