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オリゴ糖は便秘に効果がある?オリゴ糖の働きや種類ごとの特徴を解説
1. オリゴ糖は便秘に効果がある?
オリゴ糖は、腸内の善玉菌(ビフィズス菌など)の餌となり、腸内フローラを整える働きがあることから、便秘の改善にも効果が期待されています。特に難消化性のオリゴ糖は、胃や小腸でほとんど消化されずに大腸まで届き、善玉菌を増やすことで腸内環境のバランスを整える「プレバイオティクス」として知られています。
さまざまな難消化性のオリゴ糖の中でも乳糖果糖オリゴ糖は、摂取量が少なくてもビフィズス菌の数が増えることが報告されており、便秘傾向の人の排便回数や便のやわらかさの改善につながったというデータがあります。
ただし、すべての人に同じような効果が現れるわけではなく、体質や食生活の影響も大きいと言われています。
出典:緒方幸代他 AG-β-D-Galactosylsucroseが女性の便通および便性改善に及ぼす影響 日本食品化学学会誌 vol.1 No.1 p.39-45 1995
1-1. オリゴ糖とは
オリゴ糖とは、2~10個程度の単糖がつながってできた炭水化物の一種です。「少糖類」とも呼ばれ、「oligo」はギリシャ語で「少ない」を意味します。中でも健康効果が注目されているのが、プレバイオティクスとして働く難消化性オリゴ糖です。難消化性オリゴ糖は野菜や果物にも含まれますが、工業的に生産される場合は多くがショ糖や乳糖、でんぷんなどを原料とし、酵素反応により作られています。
母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖(HMOs)はビフィズス菌の選択的な増殖を促し、赤ちゃんの腸内環境を整える役割で知られています。現在は、腸内で善玉菌の増殖を促し、腸内フローラを整えるという機能を生かしたオリゴ糖が、大人の健康維持にも広く活用されています。
1-2. オリゴ糖とはちみつ・砂糖の違い
はちみつは、ミツバチが花の蜜を集めて作る天然の甘味料です。ブドウ糖や果糖、オリゴ糖のほかにアミノ酸やミネラルも含まれ、「天然の栄養ドリンク」とも呼ばれます。オリゴ糖のほとんどは腸まで届いて善玉菌のエサとして腸内環境を整える機能がありますが、はちみつは消化吸収が早く、すぐにエネルギーになるのが特徴です。また、はちみつはオリゴ糖よりも濃厚でコクのある甘さを持ちます。
砂糖は、ショ糖を主成分とする甘味料です。体内で速やかにブドウ糖と果糖に分解され、主に脳や筋肉のエネルギー源になります。砂糖は強い甘さを持つ一方、オリゴ糖は砂糖に比べて低カロリー・低甘味です。虫歯になりにくく整腸効果がある点も違いとして挙げられます。
2. 腸に関わる難消化性オリゴ糖の働き
難消化性オリゴ糖は小腸でほとんど消化されずに大腸まで届き、腸内の善玉菌を増やすことで腸内環境を整える働きがあります。以下では、難消化性オリゴ糖の具体的な作用を解説します。
2-1. 腸内フローラを整える
腸内フローラとは、腸内に生息する約1,000種類以上の細菌がバランスを取りながら共存している様子をお花畑(フローラ)にたとえた言葉です。腸内フローラは善玉菌・悪玉菌・日和見菌から構成されており、健康を保つには善玉菌が優位な状態が理想とされています。
難消化性オリゴ糖は人の消化酵素ではほとんど分解されず、大腸に届いて善玉菌であるビフィズス菌のエサになります。ビフィズス菌が増えることで、腸内の細菌バランスが整い、これが「腸内フローラを整える」という働きにつながります。善玉菌が優位な環境を維持すると、便秘や下痢の予防だけでなく、免疫力の維持やメンタルヘルスにも好影響を与えるでしょう。
2-2. 短鎖脂肪酸や乳酸を産生してぜん動運動を促す
難消化性オリゴ糖のほとんどは小腸で分解・吸収されずに大腸へ届き、腸内の善玉菌のエサとなって発酵されます。この発酵の過程で、短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)や乳酸が産生されます。短鎖脂肪酸は、大腸の粘膜細胞にとって貴重なエネルギー源となるだけでなく、腸を刺激してぜん動運動(腸の収縮運動)を活発化させる働きを持つものです。
その結果、便通の改善やおなかのハリの解消などの整腸作用や、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の増殖を抑える効果も期待されています。つまり、オリゴ糖を摂取すると、善玉菌を助け、その働き者である短鎖脂肪酸を生み出す流れを作り出せると言えるでしょう。
2-3. 腸のバリア機能を高める
難消化性オリゴ糖は、大腸で善玉菌により発酵され、短鎖脂肪酸が産生されます。短鎖脂肪酸のうち酪酸は、大腸の上皮細胞のエネルギー源となるだけでなく、粘膜の免疫応答を調整したり、粘液(ムチン)層の形成を助けたりすることで、腸内の有害菌やアレルゲンの侵入を防ぐと言われています。
また、免疫に関わるIgA抗体の分泌や制御性T細胞の誘導にも関与しており、酪酸は腸内フローラと免疫機能の橋渡し役とも言えます。オリゴ糖を摂取することで腸内の発酵が活性化すれば、防御機能の土台が作られていくでしょう。
3. 難消化性オリゴ糖の代表的な種類と特徴
難消化性オリゴ糖と一口に言ってもさまざまな種類があり、それぞれ働きや特徴が異なります。ここでは、腸内環境を整える効果が期待される代表的なオリゴ糖を紹介します。
3-1. フラクトオリゴ糖
フラクトオリゴ糖は、スクロースにフラクトースが1~3分子結合した3~5糖の構造を持つ、難消化性オリゴ糖の一種です。タマネギやチコリ、バナナなどの食べ物にも含まれていますが、食品原料としては主に酵素を用いて工業的に製造されます。甘さはショ糖の約3分の1と控えめで、虫歯になりにくく、低カロリーな糖質としても知られています。
人の小腸でほとんど消化されずに大腸へ届き、乳酸菌やビフィズス菌の餌となって腸内環境を改善するとされています。さらに、腸内発酵により酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が産生され、便通の改善やミネラルの吸収促進にも寄与します。整腸作用やミネラル吸収促進の効果が認められることから、特定保健用食品としても長く利用されています。
3-2. ビートオリゴ糖(ラフィノース)
ビートオリゴ糖(ラフィノース)は、てんさい(ビート)から得られる難消化性オリゴ糖です。ショ糖にガラクトースが結合した構造をしていて、工業的にはてんさい糖の製造時に残る糖蜜から分離・精製されます。天然では大豆やブロッコリーなど多くの植物にも含まれ、植物が寒さなどのストレスに耐えるための成分としても知られています。
摂取すると消化酵素でほとんどが分解されることなく大腸まで届き、ビフィズス菌を増やして腸内環境を整えるプレバイオティクスとして働きます。さらに、アレルギー症状の軽減作用も認められており、整腸作用にとどまらず免疫面へのプラス効果も期待されています。甘さは控えめで扱いやすく、健康志向の食品素材として注目されています。
3-3. キシロオリゴ糖
キシロオリゴ糖は、とうもろこしの芯やもみ殻といった植物由来の食物繊維を原料とし、分解・精製して作られる難消化性オリゴ糖です。食品では、たけのこやきのこなども含まれています。主成分のキシロビオースはショ糖の約30%の甘さで、さわやかで上品な甘味を持ちます。
人の消化酵素ではほとんど分解されず、大腸に届いてビフィズス菌を選択的に増やす特性があります。腸内フローラの改善や便の水分バランスの調整、便のpHの適正化などに効果が認められ、少量の摂取でも腸内環境を良好に保つと言われています。さらに、悪玉菌であるクロストリジウム菌などには資化されず、有用菌にのみ利用されやすいのも特徴です。
3-4. ガラクトオリゴ糖
ガラクトオリゴ糖は、牛乳や発酵乳に含まれる乳糖を原料に作られる難消化性オリゴ糖です。熱や酸に強く、加工食品にも広く利用されています。主成分の4′-ガラクトシルラクトース(4′-GL)は、母乳や牛乳にも含まれている成分です。
消化酵素でほとんど分解されずに大腸まで届き、腸内でビフィズス菌の増殖を促進するほか、腸内フローラの改善や排便回数の増加、腐敗産物の抑制といった整腸作用が期待されています。さらに、ミネラルの吸収促進や虫歯になりにくい性質、免疫機能への作用も期待されており、育児用粉乳などにも活用されています。
3-5. ミルクオリゴ糖(ラクチュロース)
ミルクオリゴ糖(ラクチュロース)は、乳糖から作られる難消化性の二糖類です。天然では牛乳にごく微量含まれています。工業的には乳糖を原料とし、異性化法によって製造されます。体内では消化酵素によってほとんどが分解されず、そのまま大腸に到達します。腸内で主にビフィズス菌によって利用され、乳酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生することで、腸内環境の改善や便通の促進に寄与します。
わずかな摂取でもビフィズス菌の増加が確認されており、低用量でも効果が期待できるのが特徴です。また、医薬品の「ラクツロース」としては、下剤や肝性脳症の治療薬としても使用されており、浸透圧作用によって腸の水分量を高めて排便を促進します。
3-6. 乳糖果糖オリゴ糖(ラクトスクロース)
乳糖果糖オリゴ糖(ラクトスクロース)は、乳糖と砂糖を原料に、特定の酵素を用いて製造される難消化性のオリゴ糖です。そのほとんどが腸まで届いて善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善に役立つプレバイオティクスの一種として知られています。特に、ビフィズス菌を選択的に増やして悪玉菌を減らす作用が認められており、1日2gという少量から効果が現れることが報告されています。
また、排便回数の増加、便の水分や色の改善、下剤使用頻度の低下といった便通改善効果も臨床試験で確認されています。腸内のアンモニアや硫化物などの有害物質の生成を抑制する働きもあり、大腸まで届いたラクトスクロースは、短鎖脂肪酸を産生して腸内のpHを下げ、腸内フローラを整えるのに役立ちます。味わいは砂糖に近く、調味料としても優れており、食品・健康分野の両面で注目されているオリゴ糖です。
4. オリゴ糖を効率よく摂る方法
オリゴ糖の健康効果をしっかり実感するには、日々の食生活への取り入れ方が大切です。ここでは、オリゴ糖を効率よく摂る方法や摂取時のポイントを解説します。
4-1. オリゴ糖を含む食品を摂る
オリゴ糖を豊富に含む食材を日々の食事に上手に取り入れると、オリゴ糖を効率的に摂取できます。オリゴ糖を含む食品は、きな粉・ごぼう・玉ねぎ・にんにく・豆腐・バナナ・ネギ・枝豆などが代表的です。これらの食材は、食物繊維も豊富に含んでおり、腸内のビフィズス菌など善玉菌のエサとなって、腸内フローラの改善に役立ちます。
朝食にバナナをヨーグルトに加えたり、ごぼうや玉ねぎを使った炒め物や煮物を夕食に出したりすると、自然にオリゴ糖を摂取できます。ただし、食品から摂れるオリゴ糖の量には限りがあります。もっと手軽にオリゴ糖を取り入れたいときは、「オリゴのおかげ」などの市販のオリゴ糖食品を組み合わせるのもおすすめです。
4-2. オリゴ糖を砂糖の代わりに使う
オリゴ糖は、甘味料として砂糖の代わりに使うことも可能です。「オリゴのおかげ」などのシロップタイプは、上白糖とよく似た上品な甘さで、料理に使っても風味に違和感がありません。たとえば、大さじ1杯の砂糖と同等の甘さを出すには、「オリゴのおかげ」なら大さじ8分目ほどで十分です。また、砂糖と同じように保水性があり、肉をやわらかく仕上げたり、でんぷんの老化を抑えたりする効果も期待できます。
カロリーは砂糖に比べて40%オフと低く、毎日の料理に上手に取り入れれば摂取エネルギーを抑えながら整腸効果も期待できます。ただし、長時間加熱が必要な料理や、酸と一緒に加熱する料理では、一部のオリゴ糖が分解される可能性があるため、後から加えるなど工夫が必要です。さらに、甘さを求めて使いすぎるとカロリー過多になることもあるので、甘味を控えめに使いながら続けることがポイントです。
4-3. ヨーグルトや食物繊維と一緒に摂る
オリゴ糖の整腸作用をより効果的に引き出すには、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、食物繊維が豊富な食品と一緒に摂取することが推奨されます。オリゴ糖は善玉菌のエサとなるプレバイオティクス、乳酸菌などは善玉菌そのものであるプロバイオティクスです。この2つを組み合わせることで、腸内環境の改善効果がさらに高まることが期待されます。
たとえば、プレーンヨーグルトにバナナやはちみつ、きな粉を加えて食べると、善玉菌とそのエサを一度に摂ることが可能です。さらに、野菜や果物、きのこ類などに含まれる食物繊維も一緒に摂取することで、腸の働きを助けて老廃物の排出を促せます。こうした食品の組み合わせを日常的に取り入れることで、より効果的に腸内環境を整えられるでしょう。
5. 便秘の方がオリゴ糖を食事に取り入れるときの注意点
子どもや高齢者など、オリゴ糖は年代に関係なく便秘ケアに活用できます。ただし、便秘症の方がオリゴ糖を食事に取り入れる際には、摂取量や体調に合わせた工夫が必要です。以下のポイントに注意しながら、オリゴ糖を日々の食事に無理なく取り入れましょう。
5-1. すべての便秘に効果があるわけではない
オリゴ糖は腸内環境を整える働きがあり、便秘改善にも役立つ成分ですが、すべての便秘に同じような効果があるわけではありません。便秘にはいくつかのタイプがあり、その原因によってはオリゴ糖の効果が十分に得られない場合もあります。たとえば、大腸の運動が低下している「弛緩性便秘」では、オリゴ糖が腸内の善玉菌を増やし、腸の動きを促進することで改善が期待できます。
一方で、自律神経の乱れなどによって腸が過剰に収縮する「けいれん性便秘」では、オリゴ糖の発酵により発生するガスが腹痛の原因になることがあります。また、便意を我慢する習慣によって起こる「直腸性便秘」では、オリゴ糖よりも生活リズムの見直しが優先されることが多いです。そのため、自分の便秘のタイプに合わせてオリゴ糖を活用するとよいでしょう。
5-2. 摂りすぎるとおなかが緩くなる可能性がある
難消化性オリゴ糖は腸内環境を整える成分として知られていますが、摂りすぎるとお腹が緩くなることがあります。これは、難消化性オリゴ糖がほとんどが小腸で吸収されず、大腸で発酵する過程でガスが発生したり、水分が腸内に引き込まれたりするためです。特に腸が敏感な方や初めて摂取する方は注意が必要です。
「特定保健用食品(規格基準型)」では、オリゴ糖の種類ごとに1日あたりの摂取目安量が定められています。たとえば、フラクトオリゴ糖は3~8g、ガラクトオリゴ糖は2~5g、キシロオリゴ糖は1~3g、大豆オリゴ糖は2~6g、乳果オリゴ糖は2~8g、イソマルトオリゴ糖は最大10gが目安です。腸内の善玉菌を増やす効果を得るための量であり、多量に摂ったからといって効果が高まるわけではありません。まずは少量から始め、計量スプーンを使うなど、自分の体調を見ながら適量を守って摂取することが大切です。
5-3. 毎日続けて摂取する
オリゴ糖は医薬品のように決まった時間に飲む必要はありませんが、1日の目安量を意識して習慣的に摂ることが推奨されます。たとえば、「朝食にヨーグルトやバナナと一緒に食べる」「コーヒーや紅茶にシロップタイプを加える」など、生活に合わせて無理なく続けられる方法を採用しましょう。
また、シロップタイプのオリゴ糖は料理に活用できるため、砂糖の代わりに煮物や炒め物、スープなどに使うのもおすすめです。効果の感じ方には個人差がありますが、摂取をやめると効果は減少する傾向にあります。そのため、できるだけ毎日の食生活の中に自然に取り入れ、少なくとも2週間は続けて摂取しましょう。
5-4. 運動などの生活習慣改善と合わせて行う
便秘を根本から改善するには、オリゴ糖の摂取と併せて生活習慣の見直しも重要です。1日3食を決まった時間に摂るなど規則正しい食生活を心がけることで、腸のぜん動運動を促し、排便のリズムを整えやすくなります。また、日常的な運動も大切です。ウォーキングやストレッチなどで腹部の筋力を保つことで、排便に必要な力が付き、腸の動きが活発になります。
「便意を我慢せずにトイレへ行く習慣を持つ」「1.5~2リットルを目安に水分を十分に摂る」といった工夫も便秘予防に役立ちます。さらに、睡眠も腸の機能に影響を与える要素の1つです。オリゴ糖だけに頼るのではなく、生活全体のバランスを整えることが、スムーズな排便への近道となります。
まとめ
オリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える「プレバイオティクス」として知られ、便秘改善にも効果が期待できる成分です。特に難消化性のオリゴ糖は、そのほとんどが小腸で吸収されずに大腸まで届くことで、ビフィズス菌の働きを助け、短鎖脂肪酸の産生や腸のバリア機能強化にも寄与します。
ただし、すべての便秘に効果があるわけではなく、体質や便秘のタイプに応じて適切に取り入れることが大切です。また、過剰に摂るとお腹が緩くなる可能性があるため、摂取量にも注意が必要です。オリゴ糖の活用とともに、規則正しい食生活や運動など生活習慣の見直しも並行することで、よりよい結果が期待できるでしょう。

<プロフィール>
加勢田 千尋
一般社団法人日本腸内環境食育推進協会代表理事、管理栄養士。病院・企業にて7000人以上の栄養指導・食事アドバイスを行う。独立後、腸に特化した食育講座『腸の学校®』を監修•運営する。自身も幼い頃からアトピーや腸の不調に悩まされ続け、腸内環境を整える食事法により便秘やアトピーなどの不調を3カ月で卒業。 現在は薬やサプリメントに頼らないずぼら腸活を伝えている。