- 低GI
オリゴ糖は血糖値を上げにくい?理由や選び方・取り入れ方を解説
オリゴ糖は、甘味を持ちながらも血糖値を上げにくく、整腸効果や虫歯の予防にも関与するとして注目を集めている糖質の一種です。特に「難消化性オリゴ糖」は小腸で吸収されずに大腸まで届き、腸内環境の改善にも寄与します。糖質制限が必要な方や糖尿病の方でも、医師や管理栄養士の指導のもとで取り入れることが可能です。
当記事では、オリゴ糖の仕組みや種類ごとの働き、食生活での取り入れ方、選ぶ際の注意点について解説します。健康的な糖質選びの参考にご活用ください。
1. オリゴ糖を摂っても血糖値への影響が小さい理由
オリゴ糖は、糖質でありながら血糖値にほとんど影響を与えない性質を持つことから、近年注目されています。通常の糖質(例えば砂糖や水あめ)は、小腸で消化酵素により単糖に分解された後、体内に吸収されて血糖値を上昇させます。
しかし、オリゴ糖の中でも「難消化性オリゴ糖」と呼ばれる種類は、ヒトの体内に存在する消化酵素では分解が難しい糖質です。小腸で吸収されずにそのまま大腸へ到達することで血液中に入る糖がほとんどなく、血糖値やインスリンの上昇が抑えられます。例えばフラクトオリゴ糖は、摂取後の血糖値やインスリン値の変化がほとんど見られず、Glycemic Index(GI値)も低いと報告されています。
このように、オリゴ糖は糖質でありながらも血糖値に影響を与えにくいという特性があり、血糖コントロールが必要な方にも適した甘味成分とされています。また、オリゴ糖は大腸に届いた後、腸内細菌のエサとして利用されることで腸内環境を整える作用も期待されており、血糖管理と腸活の両面から注目される存在です。
出典:alic 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖 ~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで~」
2. オリゴ糖の特徴と働き
オリゴ糖には、血糖値への影響が小さいだけでなく、健康に関わるさまざまな特徴があります。砂糖と比べて低カロリーで虫歯になりにくく、整腸作用や腸内細菌による短鎖脂肪酸の産生にも関与します。以下では、これらの具体的な働きについて詳しく解説します。
2-1. 砂糖と比べて低カロリー
オリゴ糖は体内で消化吸収されにくいため、摂取後のエネルギー量が抑えられ、砂糖よりもカロリーが低いのが特徴です。近年では肥満や生活習慣病への関心が高まり、食品においても低カロリー甘味料が注目されています。その中でオリゴ糖は、甘さを保ちつつエネルギー摂取を控えられる素材として需要が増えています。砂糖のカロリーは1gあたり約4kcalですが、フラクトオリゴ糖や乳糖果糖オリゴ糖は1gあたり約2kcalです。
出典:消費者庁「難消化性糖質及び食物繊維のエネルギー換算係数の見直し等に関する調査・検証事業報告書」
ただし、一般的に市販されている「オリゴ糖シロップ」には、オリゴ糖だけでなくショ糖や水あめなどが含まれていることもあるため、オリゴ糖=低カロリーと短絡的に捉えず、製品の成分表示を確認することが大切です。
また、オリゴ糖は使用量が増えすぎると緩下作用を引き起こす可能性があります。摂取量には注意し、健康的な甘味料として適量を取り入れることが求められます。
2-2. 虫歯になりにくい性質(低う蝕性)
オリゴ糖には、いくつかの種類において「虫歯の原因になりにくい性質(低う蝕性)」があることが知られています。虫歯の主因とされるミュータンス菌(Streptococcus mutans)によって利用されにくく、歯垢形成の原因となる不溶性グルカンの生成もほとんど起こりません。
また、乳酸などの有機酸への変化も少ないため、歯のエナメル質を溶かす「脱灰」のリスクが低いとされています。
ただし、「オリゴ糖を摂っていれば虫歯にならない」というわけではありません。間食の頻度や食後の口腔ケアの習慣が、虫歯予防において最も重要な要素であることは変わりません。オリゴ糖をうまく活用することは、虫歯リスクを減らす一助になります。
出典:alic 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで~」
2-3. 整腸効果
オリゴ糖の摂取による整腸効果は、オリゴ糖自体の作用ではなく、腸内に存在する善玉菌、特にビフィズス菌の働きを通じて間接的にもたらされます。乳糖果糖オリゴ糖は小腸で吸収されにくく、そのまま大腸まで届くため、ビフィズス菌の栄養源となって腸内での増殖を促進します。
実際、健常成人が1日1gの乳糖果糖オリゴ糖を1週間摂取した調査では、ビフィズス菌の増加が確認されており、また1日2gを2週間摂取した調査では排便回数の増加や便性の改善といった効果も報告されています。こうした結果から、乳糖果糖オリゴ糖は「おなかの調子を整える」機能があるとして、特定保健用食品(トクホ)としても認可されています。
出典:藤田孝輝 ラクトスクロース(乳糖果糖オリゴ糖)の機能と製品開発 JATAFFジャーナル Vol.10 No.5 p.26-31
2-4. 短鎖脂肪酸の産生
オリゴ糖は腸内で善玉菌により発酵され、その過程で酢酸・プロピオン酸・酪酸などの短鎖脂肪酸が産生されます。これらは腸内のpHを下げ、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが溶けやすくなることで、吸収を促進する働きがあるとされています。実際に「ミネラルの吸収促進」は、特定保健用食品としても認可されており、整腸機能との両面から活用される商品も存在します。
さらに短鎖脂肪酸は、コレステロール合成の抑制やエネルギー代謝の調節にも関与しており、近年では免疫機能の調整やエピゲノム制御への影響も報告されています。腸内環境を整えるのみならず、全身の健康に広く関与する点が注目されています。
出典:alic 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで~」
3. オリゴ糖は糖尿病の方が食べても大丈夫?
難消化性オリゴ糖は、小腸で分解・吸収されにくいため、摂取しても血糖値への影響が非常に小さいとされています。この性質から、糖尿病の方でも医師や管理栄養士の指導のもとで取り入れることが可能な甘味料の1つと考えられています。糖尿病の方は普段の食事に気を使う必要はあるものの、絶対に食べてはいけない食品はありません。正しい食習慣を守り、過食を避ければ、オリゴ糖も食生活に取り入れられます。
ただし、オリゴ糖シロップなど一部の製品にはショ糖や水あめなどが加えられていることもあるため、商品選びには注意が必要です。また、難消化性オリゴ糖は過剰に摂取すると腸管内の浸透圧を高め、余分に水分が引き込まれることでお腹が緩くなる可能性があります。一度に大量に摂らず、量や頻度を調整しながら利用することが推奨されます。
4. オリゴ糖で血糖をコントロールする方法や生活への取り入れ方
オリゴ糖は、血糖値を急激に上げにくい性質を持つため、日常生活の中でうまく活用すれば、血糖コントロールに役立ちます。以下に、具体的な取り入れ方を3つ紹介します。
- オリゴ糖を含む食品を取り入れる
オリゴ糖は、玉ねぎやバナナ、にんにく、ゴボウ、アスパラガスなどの食品に含まれています。オリゴ糖を含む食材を毎日の食事に取り入れることで、自然な形で摂取できます。過剰な摂取を避けつつ、腸内環境を意識した食事の一部として活用しましょう。
- 砂糖の代わりに使う
料理や飲み物の甘味付けにオリゴ糖を使用することで、砂糖よりも低カロリーかつ血糖値への影響を抑えられます。ただし、市販のオリゴ糖シロップにはショ糖などが含まれている製品もあるため、成分表示を確認して選ぶことが大切です。
- 医師や管理栄養士の指導を優先する
糖尿病などの生活習慣病を抱えている方は、食事内容が治療に直結します。オリゴ糖の導入についても、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行いましょう。体調や薬の影響も考慮する必要があるため、自己判断で取り入れるのは避けてください。
5. オリゴ糖を選ぶ・取り入れるときの注意点
オリゴ糖は血糖値に配慮した甘味料として注目されていますが、取り入れる際にはいくつかの注意点があります。以下のポイントを意識することで、より適切に活用できます。
- 高純度のオリゴ糖を選ぶ
「オリゴ糖入り」と表示された商品であっても、実際にはショ糖やブドウ糖などの糖類が多く含まれている場合があります。血糖値の影響が気になる場合には、できるだけオリゴ糖の純度が高い製品を選ぶことが重要です。ただし、一般的な市販製品では純度100%のオリゴ糖は存在せず、原料に由来する糖質が含まれている点にも注意が必要です。原材料欄や栄養成分表示を確認し、なるべくオリゴ糖の純度が高いものを選びましょう。
- 甘味が少ないため過剰摂取に注意する
オリゴ糖は砂糖より甘さが控えめなため、多く使いすぎてしまうことがあります。しかし、過剰摂取はお腹が緩くなる原因になります。特に腸が敏感な方は少量からの使用をおすすめします。
- 適量を摂る
オリゴ糖はフラクトオリゴ糖は3~8g、乳果オリゴ糖は2~8g、ガラクトオリゴ糖は2~5gが1日の摂取量の目安とされています。腸内環境の改善や血糖コントロールを目的とする場合でも、適量を守って取り入れることが大切です。体質や年齢によっては個人差があるため、体調を見ながら調整しましょう。
まとめ
オリゴ糖は、小腸で消化吸収されにくいため血糖値への影響が少なく、低カロリーで虫歯になりにくい、腸内環境を整えるといった特性を持つ糖質です。特に難消化性オリゴ糖は、糖尿病の方の食事にも取り入れやすく、砂糖の代替甘味料として注目されています。
ただし、商品によってはショ糖などが含まれていることもあるため、成分表示の確認が重要です。健康効果を得るためにも、医師や管理栄養士の指導を受けながら、適量を守って取り入れましょう。

<プロフィール>
加勢田 千尋
一般社団法人日本腸内環境食育推進協会代表理事、管理栄養士。病院・企業にて7000人以上の栄養指導・食事アドバイスを行う。独立後、腸に特化した食育講座『腸の学校®』を監修•運営する。自身も幼い頃からアトピーや腸の不調に悩まされ続け、腸内環境を整える食事法により便秘やアトピーなどの不調を3カ月で卒業。 現在は薬やサプリメントに頼らないずぼら腸活を伝えている。